寒冷地にある水芭蕉が、芭蕉布のような葉をつけることができるのは、栄養豊かな里山の水に恵まれているからです。四月上旬から花が咲きだします。
雨は雪は水蒸気が集まった水滴ですから、養分はほとんどありません。その水滴にミネラル分を溶かし込み、いのちの水に変えているのは里山です。ひらりんの小さな流れは全長は5百メートルほどしかありません。この森で、いのちの水づくりの工程を観ることができます。
まだ葉を広げていない森は明るく、草の茂っていない水辺は観察に適しています。赤江川はいくつもの山ひだから流れ込むせせらぎを集めて水量を増やしていきます。ひらりんの森から流れて来るせせらぎもここに集まります。
一緒にこの小さなせせらぎの源をたずねてみましょう。
いねを作らなくなったたんぼの用水にはショウジョウバカマが咲きはじめました。
せせらぎが流れ落ちる岩になにか巻貝がくっついています。カワニナです。ここにはドジョウやイモリ、サワガニもいます。50年前のこの谷がひな壇の田んぼだったころ、カワニナをえさにする蛍が飛び交っていました。
ビオトープ池が見えてきました。この池は、水辺の生き物たちのために作りました。そのわきにはキショウブの群生地があります。5月には黄色い花が咲きます。
池を過ぎると谷は二つに分かれ、せせらぎの水も少なくなります。
この上部に、雨や雪の水にいのちを吹き込む湿地帯があります。
谷は細くなり、そこには湿地帯が続いています。表面は周りの山からの落ち葉や枯れ枝が積もっていますが長靴でもめり込み、抜けなくなるような沼地です。じつは、ここは水にいのちを吹き込む大切な工房なのです。ここには微生物がいっぱいいて、葉を分解して土にします。そのとき、葉や木の中にある窒素や炭素、鉄や銅、カルシュームなどのミネラル分を水に溶かしこんでくれています。
湿地帯から流れ出るせせらぎに木の根っこがいっぱい集まっていました。水にとけこんだミネラル分を吸い上げるためです。このミネラル分は木が大きくなるのに必要なのです。
さらに上に行きますと幾筋ものひび割れのような流れになります。ここが一番谷奥の源流になります。
写真ではなだらかに見えますが、谷のいちばん奥は、三方がすり鉢状の急斜面になっています。ここは日照りの夏のときでも、水をおくり続けている天然のダムなのです。
むかしから「ゆたかな海は豊な森から」と言われてきました。いま全国各地で漁民による植林が行なわれています。里山に棲む微生物は木の葉や土に含まれている鉄をフルボ酸で水に溶かしこみます。川の水には海水の約100倍のフルボ酸鉄が含まれています。フルボ酸鉄は海藻やプランクトンの成長にはなくてはならないのです。ひらりんの森がつくりだす水には、多くのフルボ酸鉄が含まれています。
自然林をもっと身近に感じられるようにするために
いま、ひらりんの森の水の旅を観察できるコースを整備しています。と、いっても歩道にするわけではありません。ぬかるんで歩けない所には枕木を並べますが、それだけです。ところどこの樹々や杭に道しるべとなるピンクのマーキングデープを巻いておきます。
伐採した枝は山積みして、微生物の力を借りて土に戻すようにしています。三年ほどで大半は土にもどります。里山と人とのかかわり方や、里山の自然林の姿を見てほしいとの想いからです。コースの整備は五月の連休前には終える予定です。
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