平林里山の山野草の自生環境を守るために

春のことになる。山の下草刈りをしていてサイハイランの群生地を見つけた。この蘭の花は、戦国武将が手にして、兵を指揮する采配に似ていることから、この名がついた。本州の落葉樹林の法面(のりめん)なら、どこでも自生している。

サイハイラン

だが、栽培や移植が難しい蘭である。その理由がよくわかっていないが、その地域の土に棲む固有の微生物群に関係しているように考える。植物の根の先端には細根菌が宿る。

土に含まれている鉄や銅、リンなどのミネラル分は植物の生長に不可欠である。しかし、植物はそれをそのままの形で接収することはできない。根の先に着いた細根菌がフタル酸などの酵素によって水に溶かしこんでくれてはじめて根の中に取り込むことができるのである。

里山には、それぞれに固有の微生物群がいる。人工栽培を試みて、いくら肥料を与えても3年ほどで消えてしまう。それは、里山の土壌に棲む微生物群まで移植できないからであろう。

自然林は“強存強栄”の側面がある。弱い立場の動植物の生存域をまもってきたのは人の手だった。富山県では5千年前の土器や石器でそれを知ることができる。

しかし、いま里山を守ってきた山民が消えつつある。それに同調して、里山の荒廃もひどくなっている。このままでいいはずがない。この活動を通じて、持続的な里山整備には何が必要なのかを考える機会が提供できればと思っている。

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