見捨てられた里山の荒ぶる姿

藤に締め上げられる杉

里山に人の手が入らなくなって半世紀が過ぎた。里山は弱肉強食の世界と化した。勝ち組は、谷下の方は竹と杉、中腹は朴ノ木、山頂付近はナラノキ。負け組は谷下の方は雪椿、中腹では柴栗、山頂付近では松の木だ。

山を遠くから眺めると、竹、杉、朴ノ木、ナラノキの葉っぱしか見えない。植林された杉は、胸高直径50センチ以上になっているが、春先には杉の木の紫色の房花が下がり、クリスマスツリーのように見えて、旅人の目をたのしませる。しかし杉の株には大蛇のような藤が取りついている。やがて、この大杉は藤に締め上げられ、ねじ切られる運命にある。

藤に締め上げられる杉
杉の梢に咲く藤の花

人か見捨てた里山は“強存強栄”の荒ぶる姿になってしまった。

日本の里山は、数千年にわたって人手が介在することによって、弱い立場の中低木や山野草の自生が維持されてきた。しかし現在はそれが失われつつある。とかく、自然災害の脅威の面から放置林のことが議論されるが、もっと視野を広げて、生きもの森という視点でとらえる時代になっている。

むろん個人の一隅を照らすような努力も必要だろうが、いま問われているのは、国民の共有財産である自然環境を、多様性を維持しながら、いかに保全していくのかという千年の森づくりである。

自生地が狭まる雪椿
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