風の時代の豊かさ

少し前のことですが、夕食時にテレビをつけていたら、7億円宝くじのCMに出ている俳優さんが「もし7億円当たったら何に使いますか?」と聞かれ、「山を買ってそこを整備して、プライベートキャンプ場にしてキャンプをします」と答えていました。

それを見ていて、「あ、私とやりたいこと一緒!」と思いつつ、今は個人で山の整備を始めたり、そこでプライベートキャンプをしたりすることが、有名人がこうやって普通に話すぐらい、ある種ポピュラーなことになってきているんだなあと興味深く見ていました。

ただ、その時そういうことをするにはお金がかかるというニュアンスで話がされていたのですが、私はそうは思いませんでした。私たち夫婦は、特段お金を使わずともそれが実現できたからです。

富山に来てから数年、山仕事から離れていた私がやっぱり山仕事をしたい、もっと山や自然と関わりたい、と強く自覚したのは、去年、2020年の冬でした。雪道を走る車の中、突如としてひらめきのようにその気持ちが自分の中から湧き上がってきたその時のことは、よく覚えています。

だからといって、私がそれに向けて何か計画をしたり調べたり準備をしたりしたかというと、特に何もしませんでした。ですがそれから数カ月が過ぎた春ごろ、夫のともただのくんが仕事で行った先のお客さんが面白い人だから、一緒に遊びに行ってみないかと誘ってきたのです。(彼がそんなことを言い出すのは、とても珍しいことです)。

なんかワクワクするものを感じたので遊びに行ってみたのですが、ひととおりそのお客さんとおしゃべりなどした後に、家の裏山を歩かせてもらうことになりました。山にもいろいろありますが、その山にはいわゆる雑木、落葉樹がたくさんあって私たちが好ましいと感じる好きなタイプの山でした。

いい山だなと思って木々を見ていると、ともただのくんが「この山をボランティアで手入れさせてもらいたいって、お願いしてみない?」と言い出すのです。瞬時に「それはいいね!」となり、早速戻って聞いてみると、その山は自分のではなく知り合いのものだから聞いてあげる、と仲介してもらえることになりました。

そこからトントン拍子に話が進み、草刈り機と地下足袋を購入して山に入ったのは、遊びに行ってから1週間もたたないうちのことでした。

そう、それが会に発展するなど夢にも思っていませんでしたが、その時訪れたのが平林であり、遊びに行ったお客さんというのが、後にこの会のメンバーの一員になってくださった「ともやん」で、紹介してもらった山の持ち主である山主さんが会の会長になってくださった「おおばさん」だったのです。

最初は夫婦2人で始まった山仕事に、お2人も合流してくださるようになり、この春「平林里山整備の会」という形になりました。そして気が付けばこのようにホームページも出来上がり、いろんな人たちに向けて自分の考えを発信する場ができて、今私はこの文章を書いています。

かかったお金は、せいぜい草刈り機などの雑費と言っていいぐらいの金額です。
私たちは自分たちで山を所有したいわけではありませんでした。山仕事を通して自然と触れ合うことが目的でした。山主のおおばさんは、山の手入れやキャンプなど、自由にやっていいと言ってくださっているので、十分満足しています。

山仕事がしたい!と自覚してから、特に何かを一生懸命に計画したり、調べたり、努力したりしたわけではありませんでしたが、気が付けばスルッとまるで最初からこのような計画があったかのように物事が進んでいっていることに、感謝や喜び、幸せを感じています。それまで富山に平林という場所があることすら知らなかったのに、もちろん知り合いの一人もいなかったのに、本当に不思議なことです。

私は、こんなふうにして自分の頭で考えつくことを超えた形で物事が形になっていく様子を見るのが好きです。

今は「風の時代」などといわれますが、今までの既存のやり方にとらわれず、自由に軽やかに柔らかく自分のやりたいことを形づくっていく、風の時代の生き方、豊かさとはこんなふうなのだろうなと思っています。

みんなが、自分が本当にやりたいことに(お金の有無にかかわらず)自由にアクセスし、どんどん楽しいこと、豊かなこと、喜びを生みだしていく、これから世の中全体がそんなふうになっていったらいいなと思っています。

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